事業者インタビュー|株式会社イプシロンソフトウェア 渡部 晋司 様 |採用・営業支援
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山陰地方で活躍するシステム開発・ゲーム開発の企業、株式会社イプシロンソフトウェア。
技術は一流でありながら、マネージメントや営業活動の課題、そしてコロナ禍という厳しい状況で事業拡大の道筋を模索していました。
そんな中、自社製品の確立と受託開発の拡大を目指す代表の渡部さん。彼の希望を実現するため、私たちは採用と営業の強化に注力しました。
イプシロンソフトウェアの特長と強みをどのように技術者やクリエイティブ系の人材へ繋げていくのか、そして、なぜ山陰地方、なぜイプシロンソフトウェアなのか。
私たちは渡部さんと共に深く議論を重ね、新たな道筋を共に歩みました。
プロフィール
渡部 晋司
1984年 島根県松江市出身。島根大学教育学部附属中学校 (現:島根大学教育学部附属義務教育学校後期課程)、松江北高校、会津大学 コンピュータ理工学部 コンピュータソフトウェア学科 (現:コンピュータ理工学科) 卒。
コンピューターサイエンスを Minyi Guo (現:IEEEフェロー、上海交通大学主任教授) に師事し、グリッド・コンピューティングに関する研究をオリンパス株式会社と産学連携で実施。卒業後は 任天堂株式会社に入社し、家庭用ゲーム機向けソフトウェア、ゲーム開発用のツール、SDK(ソフトウェア開発キット) の開発に携わる。2012年よりグリー株式会社に入社。ソーシャルゲームプラットフォーム事業に従事。2013年より同社のリードエンジニアに就任し、スマートフォン向けゲームの開発に携わる。
2016年に独立し、株式会社 イプシロンソフトウェアを設立、代表取締役社長に就任。
小さくとも無くてはならない会社「イプシロンソフトウェア」を目指して
—まずは事業内容についてお伺いできますでしょうか。
渡部:うちの会社は2016年ぐらいに立ち上がって、主にIT系のソフトウェアやゲームの開発をさせていただいています。
—ところで、以前から気になっていたのですが、社名の「イプシロンソフトウェア」はどのような由来でつけられたのでしょうか?
渡部:非常にマニアックな話になってしまうのですが、コンピューターって処理スピードは速くても、とにかく速いだけで実は結構計算が雑だったりするんです。よく32ビットや64ビットという表現がありますよね。
要するに、32ビットや64ビットの範囲内でしか計算が行えないのですが、それらを巧みに組み合わせて処理を進めることで問題を解決しています。加えて、計算速度が非常に高速であるため、なんとかなっているというのが実情なんです。
特に、コンピュータは小数点の取り扱いが不得意な部分があります。その中でも、コンピュータが表現できる最小の単位とされている数値を「計算機イプシロン」と呼びます。
計算機イプシロンは非常に小さい数値ですが、無くてはならない重要な概念なので、「小さい企業だけれども無くてはならない会社」という意味合いを込めました。
—ありがとうございます。渡部さんご自身についても少しだけご経歴に触れていただいてもよろしいでしょうか。
渡部:僕は島根県の松江市出身で、地元の田舎で高校まで過ごしました。大学は福島県の会津大学のコンピュータ理工学部を出て、そこでコンピュータの専門技術について学びました。
卒業後は主にゲーム業界でキャリアを積むことになり、新卒で任天堂に入社しました。それこそスタッフロールに名前が載っているものだと、「マリオカート7」や「街へいこうよ どうぶつの森」「ゼルダの伝説 スカイウォードソード」など、いくつかの有名なゲームの開発に携わりました。
ただ、当時はまだ社会人歴が浅かったので、ビックネームに関わっているといえど大きな役割を任されることって当然無くて、「これは僕の作品です」と胸を張って言えるほどの貢献はできなかったんですよね。
そんな中、世の中にスマホブームが訪れたのをきっかけに、ゲーム全般もスマホで展開されていく未来が見えたので、スマホゲームを開発できる企業に転職をしました。
-スマートフォンが普及し始めた当初から、「これは来るな」という流れを読まれていたんですね。
渡部:はい。その後、GREEに入社し、一番大きな仕事でいうとスマホゲーム「消滅都市」の立ち上げ時のメインプログラムを担当しました。そのゲームは2023年5月で10年目を迎えるという、非常に長寿なタイトルとなりました。
「消滅都市」に関しては、任天堂時代と異なり重要な役割を果たせたため、自分のキャリアの中でも大きな存在感を放っていると思っていますし、胸を張って「自分の作品だ」と言えるので、携われて良かったと思っています。
そして、2016年に地元に帰り、自分の会社を設立しました。
–まだまだお伺いしたいのですが、ここで起業してからのお話しもお伺いしてよろしいでしょうか?
渡部:会社を設立した後の率直な感想は、本当に大変だなっていうのが正直な気持ちです。技術的な面では、自分自身でも色々と対応ができるので何とかやり続けられているのと、またIT関連を含めた需要が非常に高いので、商売感覚があまりない僕でも時代に支えてもらって事業を進められていると感じています。
-商売感覚が無い印象は受けないのですが、開発の腕が立つ分、時代に乗っているというのは本当に見ていて感じます。他には無い会社だなという印象です。
受託開発と自社製品の両立を実現するイプシロンソフトウェアの挑戦
-初めて渡部さんとお会いさせていただいたのがプロ人材のマッチングプラットフォームがきっかけだと思いますが、当時の状況を教えてもらってもよろしいでしょうか。
渡部:当時は自分たちで何か製品を作ろうとしていたのですが、そのプロジェクト自体が頓挫してしまったり、技術的にはちゃんとできていてもマーケティングの観点からは考える余地があったりなど、さまざまな問題が出てしまって。
結果的に2つの面でテコ入れをしていく必要があることが分かりました。
1つは、もちろんプロジェクト自体を立て直していかないといけないことと、もう1つは自社製品ではなくシステムソフトウェアやゲーム開発などの受託案件を伸ばしていくことでした。受託案件をやりながら自分たちのプロジェクトに投資をしていくような流れにしたかったんです。
ただ当時、社員が9~10人の中で入れ替わりが激しくて、定着しないことに悩んでいました。さらにマネージメントも上手くいかず、僕自身が営業の経験がなかったこととコロナ禍が重なり、営業活動も思うように進みませんでした。
結局、自分自身を振り返ってみた時に、作品も会社も0から何かを生み出すのは得意だと思うのですが、その作ったものや会社自体をさらに拡大するという段階になると、僕が得意とするフェーズでは無いような気は薄々感じていました。
そこで新しい風を入れるという意味でも、外部の方のご意見などを参考にしてみたいというのがプロ人材のマッチングプラットフォームを活用してみるきっかけでした。
-不得意な分野はそこを専門とする方に補っていただき、渡部さんご自身は製品作りや技術の方面のバリューに注力していくことにされたんですね。当初、マッチングプラットフォームでは壁打ち相手を募集されていたと記憶しております。
渡部:そうですね。その時は”受託開発の拡大”という具体的な目標があったわけではありませんでした。プロジェクトも進行していましたし、それが本当に正しい方向なのか、今後の事業展開をどうすべきか、といったことを一人で考えるのが難しくなってきて、壁打ちや経営補佐のような役割で一緒に考えてくれる人を求めていました。
実際に受託開発の拡大についての話が出てきたのは、それこそ東良さんとの関わりが始まってからですね。
–確かに後から出てきましたね。
渡部:お会いしていなかったら、多分そういう思いに至ってないと思います。
まさに鶏が先か卵が先かみたいな問題だと思いますが、新しい仕事を取るためには採用の必要性は感じていました。
ただ採用を行なっても僕自身が営業に対しての苦手意識があったので採用に対して踏みとどまってしまっていたのですが、「営業はなんとかなるんで」と東良さんのお心強い言葉で、アクセルを踏むことができました。
–ありがとうございます。少し脇道に逸れますが、マッチングプラットフォームでは多くの方々が存在されたと思います。その中から私たちの会社を選んでいただいた特別な理由があれば、ぜひお聞かせいただけますと幸いです。
渡部:先ほども述べた通り、受託開発を伸ばしていきたいと思っていて、その中で当然採用などの必要性も感じていました。東良さんのご経歴を拝見した際に、採用や人材の分野でも得意そうだったのと、かつ営業面に関してもIT関係やゲーム関係でコネクションをお持ちになられていたので、まさにうちの会社と重なる部分だなと感じてお願いしました。
あとは実際にお会いしてお付き合いしたいなと思ったのもありますし、これは余談なのですが、ご近所で活動されていると言うことで勝手に親近感が湧いたのも理由の一つです(笑)
–確かにびっくりするくらい近所です(笑)当時、新しい風として私たちが入った際ですが、渡部さんはどちらかというとコンサルに抵抗があったという認識があります。
渡部:そうですね。コンサル自体に全て抵抗があるわけではないのですが、表面的な提案ばかりで実際には第一線で働いた経験がなかったり、実務経験やそれに基づく知識が乏しかったり、そのようなコンサルには確かに抵抗感を覚えていました。
僕自身が技術の道でずっと来ていて、後輩たちにも自身の経験に基づいた指導を行ってきたからこそ、そのような感覚があったのかもしれませんが。
東良さんは人材業界でご経験があったので、その点もご一緒させていただいている理由の一つかもしれません。現に採用面での成果も既に出ていますからね。
–ありがとうございます。当時、渡部さんの思想やアイデンティティを深く掘り下げながら、新たなメンバーはゲーム開発の方向で増やすのか、それともシステム開発で増やすのかという議論が再燃したと思います。その二つの可能性を模索しつつ、弊社の強みや弱み、さらには外部環境を考慮に入れて戦略を練っていったのが、事の進行の流れでした。そして、結果的にはWantedlyの導入をされたと思います。実際に、新卒採用やエージェントを通して主に行ってきた採用活動から、このようなプッシュ型の採用活動に踏み出して、何か新たに感じたことはありますか?
渡部:そうですね。風潮が変わってきていると感じています。やっぱり中小企業なので、待遇面などで至らない点があるかと思いますが、若手の方が気にされるところがそこではなくて、学べることや人間関係の良さなどを重要視していることを実感しました。
-恐縮ながら、私自身は上手くいくだろうと思ったのでご提案させていただいたのですが、山陰地方のシステム開発・ゲーム開発会社様が東京からのUIターンを採用する難しさも十分に理解していましたし、エンジニアの需要と供給のバランスから考えて、1名を採用するのに約150万円がかかるのが現状の相場だということもお伺いしていたので、全力を尽くしつつも、ドキドキしながら運用を進めていました。
でも蓋を開けてみると、Wantedlyに関して年間140万ほどお支払いして、実施から8ヶ月で5名採用できているので、採用にかかるコストはかなり抑えられたのではないでしょうか。
–本当に渡部さんとイプシロンソフトウェア様の魅力ありきだと思います。皆様やっぱりそこに惚れ込んで入社されているので。
渡部:そうですね。採用してもその次やっぱり営業に繋げていきたいので、ぜひ引き続きご一緒にというか見捨てずに……(笑)
–何をおっしゃいますか(笑)ぜひ、こちらこそです。最後になりますが、この先の方向性や展望がありましたらお聞かせください。
渡部:東良さんと具体的にやっていくことに関しては、採用活動を続けつつ、同時に営業の面も拡大していくことですね。あとは、最終的には売り上げが安定し、クリエイターが自分の本質をちゃんと出しながら会社側もそれを支える環境になり、その中でヒット作品が出てきたら良いなと考えています。何年後になるかもしれませんが(笑)
クリエイターと共に会社全体として有名になって、クリエイターとコミュニケーションを上手く取りながら、お互いがWin-Winな状態で作品が作れると嬉しいなと思っています。